私が訪問看護にはまったわけ

私が訪問看護にはまった理由はたくさんありますが、やった~!とガッツポーズをきめたくなるような出来事について書きます。 私が訪問看護師になりたての頃、あるご家族(Aさん家族)を受け持ちました。そこのご家族は両親ともに訪問看護を受けており、同居の息子さんは無職で、生活保護を受けているお宅でした。訪問のサービスだけを受けており、デイサービスには行きたくないか、お金がなくていけないかという状況でした。行くとまずは環境整備から。なにか怪しいものを踏まないようにまず確認。そしてご飯を食べたか確認し、食べてなかったら食べられそうなものを探し。着替えも洗濯しないとないので洗濯機(二層式)を回す。ほす。お風呂を沸かし入浴介助し、シーツ交換。とにかく何でもやってました。 そこのご家族への訪問看護はそこのSTの登竜門みたいな感じでした。ありとあらゆる工夫をしないと生活がなりたたないのですから。おかげでいろいろ考えました。 ある時、STで利用者さんや家族を対象にお食事会をしようとなり私も企画に関わることになりました。ショッピングセンターでお買い物をして、そこのホテルでお食事をするといった日程になりました。 Aさん家族もお誘いすると、お母さんのほうはすぐに行きたいと返事がありました。その時もうれしかったですね。普段家から一歩も出ることができなかったので。お父さんの方は行きたくないと。それからお母さんの方は当日着ていく服をタンスの中から探したり、靴も普段はいていなかったので探しました。お店のパンフレットを見ながらあれを買おうここ行こうとすごく楽しみにしてくれました。 そんな様子を見ていたからか、直前になってお父さんのほうも行きたい、といってくれました。 お父さんの方も家からここ数年一歩も出てないんです。いつも元気なさげに煙草を吸っている姿しか見ていませんでした。 そして当日。お二人ともあのぐちゃぐちゃの生活から想像できないくらい、一応着飾って(普通くらいですがお二人にとってはちゃんとした服装自体が着飾ってるくらいでした)、満面の笑顔で買い物していました。それもおかあさんは息子さんへのお土産ばかり。自分のものは買わずに。だめな息子でもかわいいんですね。うちもそうですが。その時にそのお母さんの愛情を感じました。自分が息子にご飯を作ってあげたり、身の回りのことをしてあげられなくなってもやはり息子のことを思う母親の姿がそこにありました。 その姿を見たとき、私は訪問看護にはまりました。ほんとやった~って感じでした。 その後また、いつものぐちゃぐちゃな生活に戻りましたが、家族にすこしお互いを思いやる気持ちが出てきた気がしました。 いまでも、病気のせいで家族関係がギクシャクしたお宅に行くとすこしでも家族の関係性が良くなるようにあれこれ考えます。一筋縄ではいかないことが多いですが、あきらめずにいつもアンテナをはってます。