非がん患者さんの緩和ケアがここ数年で話題になりつつあります。そこで、なぜ「非がん」=がん患者さんではない患者さんなのでしょうか?変な言い方ですよね。緩和ケアといえば今まではがん患者さんの緩和ケアが想像されました。しかし、私自身も随分前から感じていましたがこの緩和ケアの考え方は、がん患者さんだけでなく、終末期にさしかかる高齢者の患者さん、さらに高齢者だけでなく病気や障害によって人生設計が変わってしまった人、身体的・精神的・社会的な苦痛のある人すべてに関係するのではないかと考えています。 非がん患者さんの身体的苦痛の1位に「呼吸困難」があります。心不全、COPD,肺炎など呼吸器に係る疾患にかかりやすいのも高齢者の特徴なので当たり前かもしれません。認知症でも緩和ケアは必要です。認知症は進行性でいずれ死に至る疾患です。進行すれば、歩けない、失禁する、食べられないなど人間の尊厳にかかわる機能を喪失する身体的体験がスピリチュアルペインとなります。高齢者では、よく「もう生きていてもしょうがない」、「はやくお迎えに来てほしい」「なんにも役にたたない」という言葉を聞きます。まさしく自分の存在意義を問う心の痛みです。 このような身体的な苦痛と自己存在意義を問う心の苦悩を緩和することが非がん患者さんの緩和ケアになるのです。がん患者さんと死との距離・スピードが違うけれども緩和ケアの考え方は一緒です。 ただ、緩和ケアについての著書はがん患者さんを想定して書かれていますので、ペインコントロール、抗がん剤の副作用による苦痛がメインとなっています。非がん患者さん特に高齢者の場合、疾患別の予後予測が難しいこと、複数の疾患があることが多いこと、個別性が高いことからケアをする医療者の知識・技術の習得には多くの経験も必要といえます。 今後、がん患者さんだけではなく、すべての患者さんに緩和ケアの知識が普及することを強く望んでいます。 私に今できることは、認知症高齢者の緩和ケアを確立することでしょうか。地道にやります。