認知症患者さんの心の叫び問題行動と呼ばないで

認知症を発症した初期の頃に、物取られ妄想があります。対象はお決まりのように身内です。物と同じように見捨てられ妄想も。どちらも何かを失う体験なんです。夫だったり、お金だったり。それと自分の役割です。大事にしていたものが多いですよね。だからこそ身内それも奪われたくない相手=お嫁さん、娘。息子が少ないのは取るはずがないからです。自分がいっさいになっていた家事は息子と立場が逆転することはないですから。

初期の頃の認知症患者さんはみなさん「頭がバカになった」「わけがわからない」「困ってるんだよ」と言います。本当にそうなんだと思います。自分でも自覚しているのに毎日のようにお金や大事にしていた物がなくなる体験をしているんです。家事を徐々にお嫁さんや娘さんが担っていく。寂しいですよね。だからこそ自分のできないところを精一杯みせないように、汚れた下着を隠す、家族以外の人にはちゃんと挨拶して取り繕うんです。そのことでさらに家族は感情的になりやすく、周囲に理解されないため孤立していきます。家の中では、自分が知らないうちに大事なものがなくなり、家族はいつも怪訝な表情をしている、これでは家族がお互いに居心地が悪くて仕方ないですよね。

そんな認知症患者さんの言動をはたからみると物とられ妄想、取り繕い、徘徊(帰宅願望)などの問題行動(いまは行動心理症状BPSD)と言ってます。ですが、認知症患者さんは、できなくなっていく自分を感じ、家族は冷たくなったり、怒ったり,自分のことを否定するそんな毎日を体験しているからこその心の叫びなんです。私たちは定期的に訪問看護で伺うことで、だんだんご本人がお客様対応でなくなり素の自分を見せてくれるようになります。そしてご本人が不平不満に思っている訳をわかりやすく介護者さんに説明します。理由がわかると介護者さんは病気のせいだったと納得がいくんです。そして認知症症状はかわらなくあっても、その言動の理由がわかると気にならなくなるんです。介護者さんが捉え方がかわるんですね。

このように、家族では冷静にご本人の言動は理解することは難しいので、専門職が家族関係の危機に陥っている生活の場で自宅にいき、継続して支援するる意義があるのだと実感しています。